歯周病があると
インプラントはできない

「歯周病なのですが、インプラントにできますか?」
そのような相談を受けることが多くあります。
歯周病で歯を失い、インプラントを希望する患者様は多くいます。しかし、歯周病がある場合、インプラント治療はできません。歯周病治療をしっかり行わなければ、インプラントにできないのです。

歯周病は一般的な疾患ですが、治療が難しく、医師だけでなく歯科衛生士にも専門性が求められます。当院では、日本臨床歯周病学会指導医である院長、同学会認定歯科衛生士が、できる限り歯を残せるように治療を進めます。やむを得ず抜歯が必要となった箇所にはインプラント治療を行い、残っている歯を守るようにしています。

しかし、インプラント治療を行うに当たり、徹底した歯周病治療を行わなければリスクが高まってしまいます。歯周病治療をしっかり行わなければ、インプラントが細菌に感染しやすくなるためです。
そのため、歯周病の人のインプラント治療は、治療に当たる医師やスタッフが、歯周病だけでなくインプラント治療についても、専門性の高い知識や技術、多くの経験を持ち合わせている必要があります。

歯を失った時の治療法には、インプラントのほか、ブリッジ・入れ歯があります。歯周病既往歴がある人のインプラント治療は、リスクが高いのは事実ですが、次のようなメリットもあります。

効果的な機能回復

歯を失うほど進行している歯周病の場合、残っている歯がブリッジや入れ歯の支持歯としての役割を果たせないケースが多いです。しかし、このようなケースでもインプラントならば骨を支えとするため、機能を回復できます。

残存歯を守る

ブリッジや入れ歯の場合、支えとなる歯に負担をかけてしまいますが、インプラントならば独立した歯を植立するため、残っている歯の寿命を縮めるようなことはありません

歯周病の既往歴がある人でも、治療前にきちんとした歯周病治療を行い、術後のメンテナンス・管理をしっかり行っていれば、インプラントは長期的に安定することがわかっています。
反対に、歯周病が軽度であっても、歯周病のままインプラント治療を行えば、失敗を招く可能性が高いでしょう。

歯周病の既往歴がある人のインプラント治療は、適切な歯周病と術後のメンテナンスが大切です。インプラントを使い続ける限り、適切なメンテナンスを続けることが必要になります。

インプラントは
天然歯以上に感染しやすい

インプラントも歯周病に感染します。インプラントの歯周病を「インプラント周囲炎」と呼びますが、インプラントは天然歯よりも細菌に感染しやすいため注意が必要です。
天然歯には、歯と歯槽骨の間に歯肉や骨に栄養を与える「歯根膜」という組織がありますが、インプラントには存在しません。そのため、天然歯のように栄養が運ばれず免疫力がないため、感染しやすいのです。

インプラント周囲炎は進行しやすい

歯周病と同様、インプラント周囲炎も初期段階では自覚できる症状がほとんどありません。知らないうちに進行してしまうのです。
天然歯の歯周病以上にインプラント周囲炎は進行しやすい特徴がありますから、適切な頻度でメンテナンスを行っていなければ、早期発見が困難になってしまいます。

インプラント周囲炎は治らない!?

インプラント周囲炎の治療法は、確立されていないのが実状です。症状を改善する方法はありますが、炎症が歯槽骨にまで達しているようなケースでは、外科的な処置が必要となるでしょう。
つまり、インプラント周囲炎を防ぐことが必要なのです。インプラント治療を行ったら、術後のメンテナンスが大切です。特に歯周病の既往歴のある人はリスクが高いと言えますから、徹底したメンテナンスが大切です。

歯周病が進行すると、骨吸収が進みます。重度の歯周病になると、骨量が大きく減り、骨を増やさなければインプラントを埋入できないケースも少なくありません。

治療部位や骨吸収の進み方(水平・垂直)によって適した骨造成法は異なりますが、GBR法や骨移植術、上顎(奥)の骨量を増やすサイナスリフト、ソケットリフトなどの方法があります。
また、骨造成を行うタイミングも症例により違います。

歯周病のリスクファクターを取り除くことも必要です

歯周病の根本的な原因はプラーク(歯垢)ですが、リスクファクターとなり得るものは多岐に渡ります。歯周病の人のインプラント治療は、適切な歯周病治療とともに歯周病のリスクファクターを取り除くことも必要になります。
主な歯周病のリスクファクターには次のようなものがあります。これは、インプラント周囲炎のリスクファクターでもあります。

  • 糖尿病
  • 骨粗しょう症
  • ストレス
  • 喫煙

適切なプラークコントロールが必須

インプラントは虫歯になりませんが、先にも述べたように歯周病(インプラント周囲炎)になります。そのため、適切なプラークコントロールが必要であり、ブラッシング技術を習得することが必要となります。
定期的に行うメンテナンス(プロフェッショナルメンテナンス)では、徹底的にプラークを除去するとともに、随時プラークコントロール(セルフメンテナンス)の質を高めるためのアドバイス・指導を行っていきます。

当院では、認定歯科衛生士がブラッシング指導を行い、患者様の生活習慣などを考慮してプラークコントロールの向上を目指します。

歯周病やインプラントについて理解することが大切

「こんなはずではなかった」と、後悔することがないように、歯周病やインプラント、患者様の口の中の現状、リスクについて正しく把握することが必要となります。
どうして歯周病になってしまったのか、なぜ抜歯が必要なのか、現在その箇所はどのような状態にあるのか(骨・軟組織の状態)、治療計画、治療期間、治療費、術後どのようなメンテナンスが必要になるのか、どのようなリスクがあるのか、といったことを患者様自身が理解することも必要でしょう。

歯周病は再発しやすい病気です。現在症状が落ち着いていても、気を抜くとインプラント周囲炎を発症する可能性があります。残っている歯も、歯周病になってしまう可能性があるでしょう。
十分な説明を受け、それを理解し、リスクも含めて納得して治療を受けることが大切です。